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花もて語れ

  

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図1 概要
 
朗読を通じた成長と友情の人間ドラマ

 今回紹介するのは「花もて語れ」という朗読をテーマにした全13巻の漫画です。
この漫画では引っ込み思案だった主人公の佐倉ハナが、朗読教室で朗読を学び成長していく話です。
また、佐佐木真理子というハナの朗読を通じて救った女性との友情の物語でもあります。

時として本は、悩みに直面したときに強く心を揺さぶり立ち向かっていく強さを与えてくれます。
本を深く読み解き人に伝えるという「朗読」がテーマだからこその面白みが詰まった物語です。

この作品を通じて感じることは、朗読は面白い!これにつきます。

朗読はイメージに始まり、イメージに終わる。
読み手はイメージしなければ言葉にはできないので、
イメージするために何度も読み込みます。
すると朗読は時として黙読以上に本の内容を聞き手に伝えるものとなる。
という言葉が漫画の中に書かれています。

音声を伝えることのできない漫画でありながら、
それが存分に伝わる内容であることが読むとわかります。

 

マンガでわかる文学作品

この漫画では、宮沢賢治芥川龍之介太宰治坂口安吾夢野久作、etcといった数々の文豪の作品をわかりやすく読むことができます。
それは、朗読の読み解き、考察、表現技法に加えて漫画としての強みを活かしながら描かれているので、自分で読むよりも深く文学を学ぶことができるものだと思っています。

有名な作品が多いながらも実はほとんどの作品を読んだことがなかったので、
この漫画を読むだけで坂口安吾読んだことあるよ!と言えるし、
考察とかも得意げに語ったりできちゃうのである意味お得な作品です。

中でも、やまなしや黄金風景、瓶詰め地獄は一人で本で読んでいたら
正直なんだこりゃって感じだったと思うので、
文学に興味はあるけど敷居は高いなと感じている人にもおすすめです。

 

読書にも活かせる朗読のテクニック

朗読には6つのステップがあり、そのうちのいくつかをいかに述べると、
1.朗読はイメージに始まりイメージに終わる。
2.セリフの読み方
3.地の文の読み方
・・・と続いていき作品の中で徐々に明らかにされていく。

特にステップ3の地の文の読み方は、小説を読む上でとても参考になるテクニックだと感じている。
すなわち、書かれている文章がどの視点から書かれているのかを見極めるというということである。

具体的には地の文は次の6つに分類できる。
作者の視点
 A.作者が作品世界の外から
 B.作者が作品世界の中に入って
 C.作者が登場人物の心の中に入って
登場人物の視点
 D.登場人物が作品世界の外で
 E.登場人物が作品世界の中で
 F.登場人物が自分自身の心の中で

小説の地の文は上記のように視点を使い分けることで、
まるで映画のカメラワークのように作品をもっとも効果的に描写しているといいます。

これを踏まえて本を読んでみると、伊藤計劃虐殺器官はひたすら地の文も主人公のEの視点で書かれているからこんなに没入感を感じるのかなとか(あっているかどうかはわかりませんが)、そういった楽しみ方もできるようになります。

朗読ってただ本の内容を声に出して読んでいるものだと思っていましたが、
この漫画で朗読についての奥深さを感じ、朗読へ興味が高まった作品です。