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他人に勧めたい面白かった本65冊(2019年読書記録まとめ)

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2019年に読んだ本

2020年を迎えましたね、今更ながらおめでとうございます!
2019年を振り返り皆様はいかがでしたでしょうか?
今回の記事では、自分で振り返る意味でも私が2019年の1年間で読んだ本を200字程度の感想を【】内に添えて紹介していきます。
読書メーターというアプリで読んだ本と感想の記録をつけており、その引用です。

bookmeter.com

いずれの本も他のブログや書評サイト、誰かから勧められた本であり、評判通り良い本ばかりでした。
ちょっと古めの本とかが多めです。
私の趣向がだいぶ色濃く反映もされている選書なので合う合わないがあるとは思いますが、興味を持っていただけたら幸いです。
なお大体の感じで「実用書」「小説」「SF」「エッセイ系」と大雑把に分類しており、順番はわりかしテキトーです。

 

実用書系
1.読書は「アウトプット」が99%

 
本を読んでから感想を書くことを始めるきっかけになった本です。
【読書メモ》読書を自分の力に変えるには話す・書く・行動するというアウトプットが重要で、何かに使えないかという視点と意訳・要約を意識して読むと良い。論文の読み方と同じだと思った。 工芸には眺めるより使えるものが美しいという「用の美」という言葉があり、知識も同じだと述べた所が気に入った。】
よろしければこちらの記事も
読書は「アウトプット」が99% - 秋田de本

2.伝える力

伝える力 (PHPビジネス新書)

伝える力 (PHPビジネス新書)

  • 作者:池上 彰
  • 発売日: 2007/04/19
  • メディア: 新書
 
人に物事をわかりやすく伝える能力を学ぼうと手にとった本です。
話すだけでなく書く・聞くも含めた「伝える力」をなぜ高めた方が良いか、高めるためにはどうしたら良いかが学べる本。 特に論理的な文章の書き方については、具体例が述べられており実践しやすく、ビジネス文書を書く際に役立つと感じた。 例えば そして という言葉は文章が論理的であれば不要と書かれており、これから意識してみたい。 読書とそのアウトプットが重視されており、この本でもビジネス書だけでなく小説も勧めていた。 小説は余計なことが書かれていない反面、興味をかきたてる要素が押さえられているところが良いらしい。

3.7つの習慣 人格主義の回復

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

 
king of 自己啓発書とまで紹介されていた名著、分厚いながらも何度も読みたい本です。
より良い人格を形成するための道筋を7つの習慣として体型的に纏めた本という印象。第1-3の習慣は、他者や環境に左右される依存した生き方ではなく、自分の感情や行動をコントロールする自立した生き方をするためのあり方を述べている。第4-6の習慣は、自分をどのようにすれば他者や社会へ良い影響を与えられるのか、お互いに良い影響をもたらし合う相互依存の状態へたどり着くための考え方が記してある。7つ目はそれらを磨き続けること。 人生がゲームだとしたらこの本はその説明書といったイメージが私の中ではしっくりきた。

4.地頭力を鍛える

 
論理的思考法を身に着けたいと考えて本を探すと到るところでおすすめされていたので手にとった本。
本書は物事にどうアプローチして考えていくのか、という基本を教えてくれる。その能力を本書では地頭力と呼ぶ。地頭力は例えばフェルミ推定で鍛えることができる。例えば日本に電柱は何本あるか?と言った問いに短時間で論理的に導く手法である。考え方には「①結論から②全体から③単純に」という3つのポイントがあり、①は仮設思考であり、最終目的地から逆算して考える発想。②は全体を俯瞰、分解するフレームワーク思考。③は抽象化思考力である。--掴み所のない課題に取り組む際に特に役立ちそうだと感じた一冊、繰り返し読みたい。

5.本の読み方

 
本の読み方というタイトルに惹かれて買った本、読書をする上での着眼点を学べました。
この本では、スローリーディング、すなわち生きていく上で使える本を増やし、読んだ本を思考や会話に反映させる読書法を勧めている。つまり数多くの情報の中から自分で選んだ本を本当に楽しむには、細かな技術、意識の変革が必要だと説いている。印象的なのは作者の意図を読み取るのが正しい読書法であると説く一方で、読者の自由に委ねた豊かな誤読を推奨している部分だ。本の中ではそのテクニックと著者の実践が紹介されているが、それを受けて自分がどう実践するか、この本に対する豊かな誤読を実践するのも著者の一つの狙いなのかもしれない 
よろしければこちらの記事も本の読み方 読んだ本から使える本に - 秋田de本

6.後悔しない超選択術

後悔しない超選択術

後悔しない超選択術

 
優柔不断な性格があるので物事をバシッと選択する術を学ぼうと思って読んだ本。
正しい選択は存在しない、いつだって目指すべきは「後悔しない選択」なのだ。本の中では人がどのように選択を決めるのかを心理学の側面から説明し、実は選択肢ではなく自分の選択パターンを満たすものを選んでいるのだということを教えてくれる。そして後悔しない選択肢はいかに選ぶのかを説明している。 私は主体性と客観的視点がこの本のテーマだと理解している。テクニックの一つとして紹介された10分後、10ヶ月後、そして10年後どうありたいかという考え方を実践し、それらを養っていきたい。

7.カモメになったペンギン

 
会社の先輩におすすめされた本、住んでいる氷山が沈むぞ!という問題に直面したペンギンたちを通じて組織の動かしなど方が学べます。
会社先輩のお勧め]才能が豊かでも効果的に組織を指揮することはできない。人々を困難な目標へと駆り立てるリーダーシップの力と、変革を成功させるための8段階のプロセスが秘訣という本。 ある問題を抱えたペンギンのコロニーを舞台にして、生き方を変えるほどの変革をどう成し遂げるかを寓話で示している。 読みやすい一方、この本から何を学ぶかは人によって異なると思う。私は、組織を動かすプレゼンの魅せ方を学んだ。Aという考え方の人をBという考え方に連れて行くにはどうすれば良いか、そのヒントがこの本から学ぶことができる。

8.夢をかなえるゾウ

夢をかなえるゾウ

夢をかなえるゾウ

 
以前人に進められて読み、昨年また読み直した本。小説形式で読みやすく非常にモチベーションが上がる一冊。
以前人に勧められて読んだことがあり、ガネーシャの教えによって成長していくサクセスストーリーみたいに感じていた。しかし、自己啓発本などを読んで自分を成長させたいと思いながらも何も変わっていないような気がする今読むと、自分が主人公と重なり、一言一言が突き刺さるような思いだった。その中でも「期待は感情の借金、期待している限り現実を変える力はない、自分が変われるとしたら行動して経験した時」という話はグサリときた。偉人の話も織り交ぜており、ダーウィンがカブトムシを口に入れる話とエジソンの実験に対する考え方が好き。

小説(国内)
9.天使の囀り

天使の囀り (角川ホラー文庫)

天使の囀り (角川ホラー文庫)

 
貴志祐介さんの本にハマった一年でした。その中でも1,2番目に没入した作品、終わりにかけての男性の教授と主人公の女性が謎を解き明かしていくドラマTRICKっぽいところが好き。
あなたの思考は本当に自分のものですか?チェッチェッ。自分が自分で無くなってしまうような恐怖を抱くミステリー。そしてオカルトではなく現実かと見紛うほどのリアルなホラー。人間の行動を司る脳は異常なまでに快感を求める。そして恐怖、感情を強く揺さぶるものは些細なきっかけで幸福へと変わる。フウウウム。変わっていく人々の描写が生々しい、特に一度社交的に見えるようになるところ、今まで報われなかっただけにその後の変わり様が切ない。主人公の女医と学者が共に行動する場面はドラマtrickを彷彿させ好きだ、それだけにマジカ..
ちなみに私は三角形の机が怖い、というか見ただけで気持ち悪くなる。多分この小説に出てきたら三角形の机の角に頭をぶつける最後とかになる。

10.青の炎

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

 
同じく貴志さん作品の倒叙ミステリ。中学校の頃に映画が流行ったような記憶があります。
男子高校生の主人公は母と妹、家族の幸せを守るために犯罪を実行する。しかし綻びが徐々に露わになって行き、自分の人生の選択肢を狭めていく結果になっていく。「一度火をつけてしまうと、瞋りの炎は際限なく燃え広がり、やがては、自分自身をも焼き尽くすことになるって」 --自分はなんでもできる、そんな男子高校生の心情が見事に描かれ、自分も同じことを考えたのではと錯覚される。そして、作品全体に漂う緊張感に最後まで目が離せない展開だった。なぜ人をあやめてはいけないのか?理屈ではなく感情に伝えてくる作品と感じた。
ブラックミラーと言う海外ドラマ?のクロコダイルという話に似ているかも、と感じながら読んでいた。そちらも、初めは事故だったものの普通の人が自分の生活を守るためにどうしようもなく犯罪を繰り返すしか選択肢がなくなってしまう話。どちらもお話しだから、本当にそれしか道がなかったのかと客観視できるが果たして自分がそうなった時に別の選択肢を見つけ出せるだろうかと考えずにはいられない。

11,12.悪の教典(上・下)

悪の教典 上 (文春文庫)

悪の教典 上 (文春文庫)

 
貴志さん作品が続きます、サイコパスの高校教師が学校を舞台に好き勝手するといった作品。映画も結構楽しめました。
上【道徳を欠いた自己中心的な合理主義、いや自由主義と言うのか、そんな人物が聖職者と言うべき教師についたらどうなるのか。主人公の蓮見聖司の言動はまさに悪魔の囁きだ。普通人が取らないけど、最も手早く障害を取り除いていく手段によって彼は学校という部隊の中で自由を手に入れていく。しかし、そんなうまい話はないと言わんばかりに彼の言動には常に綻びがある。必ずいつか終わりが来る、そう思って読み進められるからこそ同時に、まだやれるぞハスミン次は何を見せてくれるんだ!そんな思い出読み進められる小説

下【上巻の正体の掴めない恐怖がじわじわと追い詰めてくる感じとは一転して、下巻ではまるで時間が追い詰めてくるかのような焦燥感。最後の舞台を用意するためにこの小説はあったのではないのかと思ったほどの躍動感と登場人物たちの思考が複雑に絡み合いクライマックスへと向かっていく。学生の頃は構内に侵入した不審者を撃退するみたいな妄想をしたが、そんな稚拙な空想は打ち砕いてやると言うような展開に読む手が止まらなかった。野心的な犯罪者が集まってくる場所だが、サイコキラーは歓迎されない。彼には本当の居場所があったのだろうか

13.白夜行

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

 
東野圭吾さんの作品は読んでおかねばと思い、タイトルで選んだ作品。めちゃくちゃ分厚いけど面白くてあっと言う間でした。
白夜行、タイトルがまず好きだ。本作の中で次々と起きる不可解な事件の中心にいるのは、徹底して一人称では語られることのない二人の主役は幼い頃に事件の重要人物として浮かび上がっていた柳原亮司と西本雪穂である。暗い過去を抱える彼らはそれぞれ自分の人生を白夜の中を生きているようだと捉えている。いつも夜なのは極夜ではと思うのだが、暗闇の中を生きる彼らにとってはこの世界が自分たちの居場所のない太陽に照らされた世界と捉えていたのだろうか。一度道を踏み外した人達はこの世界にどう生きれば良いのかそんなことを思わせる一冊

14.告白

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

 
こちらはイヤミスで有名な作品で、到るところで目にしてたためずっと読みたいと思っていた一冊です。
いわゆる社会人になってから、学校そして家庭というのはなんとも歪な社会集団であったのだろうと、小説を読んでいるとそう思うことがある。この小説はそんな感情を嫌にも思い起こさせてくれる。学校内で娘を亡くした教師の告白から始まるこの小説は、事件に関わる生徒、その家族と様々な視点で事件について語られる。特に心に残ったのは事件の片棒を担いだ生徒が教師の告白を機に追い詰められ心が蝕まれていく様子を描いた求道者の章だ。その前の慈愛者という章でその母親の視点からその生徒が綴られているだけに強烈に心に残った。

15.13階段

13階段 (講談社文庫)

13階段 (講談社文庫)

 
高野さんの本はこれまでにジェノサイドを読んだことがありとても面白かったので、こちらも以前からずっと気になっていた作品。
人の命を奪い前科を負った青年と、仕事として人の命を扱う刑務官がそれぞれの思いを抱え、死刑囚の冤罪を晴らすために捜査をする。 --「〜死刑制度を維持しているのは、国民でも国家でもなく、犯罪者自身なんだ」この作品の面白いと感じたところは、ミステリーの部分だけでなく、物語の中で浮き彫りになる法律や制度を超えた善悪の捉え方、罪とは何か、犯罪に対して自分はどう考えるのか、そういった問いを投げかけてくるように感じたところである。死刑やその周辺の制度、思想を学び考えることができた一冊

16.イニシエーション・ラブ

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 
衝撃の最後の2行というフレーズに惹かれ読んだ本。見事に騙されました。
大学生〜社会人の主人公と歯科衛生士として働くマユとの恋愛を描いた小説。題名のイニシエーションラブは通過儀礼としての恋愛という意味だと述べられ付き合ってからの心の変化、そして本に仕掛けられたトリックに心揺さぶられる話。 --うわー...!これは、...読んだ直後は胸が締め付けられるような辛さを感じていたのが、最後の2行を何度か読み直して仕掛けがわかった瞬間に、嘘だろぅ!!?と自分が間違ってるんじゃないかと思うほどに、本の内容と繭子に感心してしまった。これはすごい。ただ後半やっぱ辛いから2度は読めないな...

17.葉桜の季節に君を想うということ

 
イニシエーション・ラブを読んで面白かったので似たような作品を探して勧められていた本。
元私立探偵の主人公のもとに悪徳商法業者の調査の話が持ち込まれる。その調査を通じて次々と、娘に会うことのできない父親、自殺を図ろうとした女性、そんな主人公の周囲の人々の謎も明らかになっていく、タイトルからは想像していなかったサスペンスドラマのような話。そしてトリックはこの本自体にも隠されていて... --最後のどんでん返しを読んだ時は衝撃というよりも、あ...そうなんだとあっけにとられた感じであった。だけどなぜこのネタ仕込んだのか考えたら、それこそが本作をミステリーとして成り立たせているんだと気付き感心した

18.十角館の殺人

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

 
有名なミステリー作品です。まさに衝撃の一行!お互いをミステリー作家の名前で呼び合うサークルってなんかいいですね。
十角形の奇妙な館のみが残る孤島、その地ではかつて多数の人間が不可解な死を遂げていた。そこへ大学ミステリ研の7人が訪れる。次々と起きる連続事件。その結末は --衝撃の一行と銘打たれた本作、本の構造自体にトリックがある本は紹介するのが難儀だが、この本は散々そう紹介されているのを見ていたにもかかわらずページをめくった瞬間の衝撃は忘れられない読書体験になることを確信している。登場人物の名前と個性が一致してきて親しみ感じた途端にどんどんいなくなるもんだから、あっさり人がいなくなっちゃう寂しさはあったが面白かった

19.ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

 
伊坂さんの本も読んでおきたいな!と思い調べているうちに最も気になったので選んだ本。
俺はやっていない!陰謀によって首相暗殺の犯人に仕立て上げられた男青柳雅春の逃走劇。こう書くといかにもありそうな陳腐さを感じさせてしまうが、本作の素晴らしい点は、主人公を取り巻く人物たち、彼らは決して主人公のために用意された人物ではなく自分の人生を生きる人間であることが描かれながら主人公と関わっていく姿が素晴らしい。そしてこの作品を語る上で欠かせないのが、どう繋がるかわかるかな?と言わんばかりに目につく数々の伏線である。わかりつつもどう回収するのかわからないもどかしさ、まさにスリリングなエンタメ小説 

20.丸太町ルヴォワール

丸太町ルヴォワール (講談社文庫)

丸太町ルヴォワール (講談社文庫)

  • 作者:円居 挽
  • 発売日: 2012/09/14
  • メディア: 文庫
 
本が好きという共通の趣味を通じて知り合った人に勧めてもらった一冊。自分で本を選ぶと無意識のうちに似た系統ばかりになっているので、とても新鮮で面白かった本。
ふと伸ばした手が掴んだのは見ず知らずの女性の手首。正体不明の女性と交わした一時の会話は1人の少年の心を惹くのに十分過ぎる時間であった。しかし、時同じにして彼の祖父が事件に巻き込まれる。事件をめぐり双龍会と呼ばれる私的裁判が繰り広げられる中、徐々に彼女の正体へと迫っていく。 --京都を舞台にした恋の話は情熱と知性の天秤が知性にふれているのを感じる。知性で語られる恋愛は理に裏付けられた感情のようだ。肝心の裁判は言葉を論理を楽しむゲームのようで二転三転とする臨場感あふれる展開であった。

21.未必のマクベス

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:早瀬 耕
  • 発売日: 2017/09/21
  • メディア: 文庫
 
ハヤカワの本が結構好きなので本屋に行くとそのコーナーに足を運びます。新宿紀伊国屋のポップを見て面白そうだと選んだ本。
--恋愛のことって忘れたはずがふとした瞬間に思い出すことあるよね、初恋ならなおさら。約20年前のバレンタインズデイにグラウンドを横切っていく初恋の人の後ろ姿を忘れられずにいる主人公は東南アジアを中心に仕事をするアラサーの男性。やがて香港の子会社の代表取締役として出向を命じられるが、そこで初恋の人の名前が出てくる。彼女はicカードの暗号化方式とその解法を知っていることで会社を追われていることが判明し、そして...。格好いい大人とはこういうもんだ、そう感じる。読んだ後はキューバリブレを飲まずにはいられない。

22.ミッキーマウスの憂鬱

ミッキーマウスの憂鬱 (新潮文庫)

ミッキーマウスの憂鬱 (新潮文庫)

 
新潮文庫の夏?のフェアで紹介されてた本、ディズニーランドに行きたくなります。
ミッキーマウスと憂鬱、とても結びつきそうにない題名のインパクト。どうやらディズニーのバックステージを描いた作品だということで興味を惹かれた。読み出したらこれが止まらない!主人公は夢見がちで暴走気味な若者、派遣社員の彼が働く美装部はキャストに着ぐるみを着せるという裏方中の裏方であった。夢の国とはいえその運営をするのは会社であるという現実を、彼だけでなく読者にも痛感させる。しかしだからこそ、働く人たちの努力があり、我々が夢を見ることができるのだ!青年の成長物語であり、ディズニーキャストに焦点を当てた仕事小説

23.また、同じ夢を見ていた

また、同じ夢を見ていた

また、同じ夢を見ていた

  • 作者:住野 よる
  • 発売日: 2016/02/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
君の膵臓をたべたいで有名な住野さんの本。心温まる話が読みたい人におすすめです。
幸せとは何かを考える少女が、どこか不思議で少しワケのありそうな女性たちと出会い触れ合うことでそれぞれ自分の幸せを見つけていく、そんなお話。 --心地よいピアノの曲を聴いているような、絵本を読んでいるような、とてもとても綺麗な話でした。途中でなるほど!こういうことね!と気づかせるような話の展開で、最後はどうなるのかなと想像しながら読むのがとても楽しかったです。途中に出てきた「作家っていう人達は、物語を読んだ人たちの心に新しい世界を作るから作家っていうんでしょ?」という言葉が気に入った。

24.ツナグ

ツナグ (新潮文庫)

ツナグ (新潮文庫)

 
こちらもいい話の本です。最近続編が出ましたね、とても良い本だったのでぜひ読みたいです。
もう一度だけでも会いたい死者はいますか?使者(ツナグ)は強くそう願った人に対して一生に一度、その仲介をしてくれる。”死者は、残された生者のためにいるのだ。”死者に想いを抱えた人たちが生きていくための物語 --死んだ人にもう一度会えるという物語はいくつもあるが、本作ではその設定を通じて生きている人にとっての死者とは?というテーマを描いた作品と思う。婚約者の話は感動した。そしてツナグの力を持つようになる主人公が死者をどう捉えていくのかを描いた5話目の使者の心得が特に良かった。後悔をしないように生きようと思う。

25.西の魔女が死んだ

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

 
優しい気持ちになれる本でこちらもとても良い読了感でした。
ハーブなどの自然に囲まれた生活、ワイルドストロベリーのジャムを作ったり、ラベンダーの上で乾かしたいい匂いのシーツを綺麗に整えたり、中学に嫌気のさした主人公のまいは、そんな自然を愛するおばあちゃんの家で暮らすことになる。英国生まれのおばあちゃんには魔女の血が流れるという、そして私にも。 --主人公のおばあちゃんが本当に大好きなんだという心理や自然の描写がとても豊かで、温かい気持ちになれる作品。おばあちゃんが教えてくれたのは感情との向き合い方で、主人公は自分の受け入れ方などを学んでいくのだった。

26.百瀬、こっちを向いて。

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

 
夏と花火と私の死体などで知られる乙一さんの別名義の本。中学生の頃乙一さんのホラー作品などにハマりましたが、こういうきれいな恋愛作品もいいですね。
偽装カップルを演じるうちに相手に心を惹かれる少年、事故で5年間意識のなかった女性と世話を続けていた少年、覆面小説家という先生と自分だけが正体を知っている女学生、自分の顔を偽りながら生活する少女、そんな彼らの切なさと青春を感じる4編の恋愛小説。 --まずどの話も設定が素晴らしい!次にこんな仕掛けが隠されていたのかと思わせる展開!そして、説明のできない恋愛のモヤモヤを自分のことに感じさせる心理描写!ハッピーエンドでもバッドエンドでもない結末で、胸が締め付けられる気分の余韻に浸れるのでよかったです。

27.舟を編む

舟を編む (光文社文庫)

舟を編む (光文社文庫)

 
三浦しをんさんの作品は映画として見てて結構好きです。とある職業とかに焦点を当てた作品が多く勉強にもなります。
「辞書は、言葉の海を渡る舟だ。辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かび上がる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために」辞書作りと、それに関わる人々に焦点を当て、十五年の年月を経て一冊の辞書が生まれるまでを描いた小説。--やっぱり普段目を向けられない仕事を舞台にした話は面白い!特にこの本では、辞書が好きでたまらないという風変わりな人だけでなく、普通の人たちがそんな人たちの働きぶりを通じて辞書作りの世界に惹かれ熱心になっていくそんな心理描写が良かった。国語辞書が欲しくなる。

28-32.ビブリア古書堂の事件手帖1~5

 
本好きにおすすめしたい作品です。読みやすく本に関する知識なんかも学べて話も面白い作品です。ちなみに紹介してるのが5感までなのはまだそこまでしか読んでないからです。
1【古本屋の店主である栞子さんと本を読めない主人公が、その店に持ち込まれた本に関わる謎を解き明かしていく物語。--はじめ僕は、古書に関わる謎...えらく堅苦しそう!?とイメージを持っていたが誤解であった。本は中に話が綴られている以前に物体である。古本屋に行けば手軽に手に入れられる一方、こんなに人から人へと渡し継がれていくモノは他にはないのではないかと思う。その中には大切にされた本もあり、それを手放す際にはそれぞれドラマがある。そんな話でとても面白かった。栞子さんがとても可愛い。

2【ビブリア古書堂の女店主と主人公がそこに持ち込まれた本とその人に関わる謎を解いていく物語。1巻は主人公の家庭にまつわる話が多かった一方、2巻では女店主の栞子さんとその家族について徐々に明らかになっていく。 --前巻では病院にいながらも次々謎を解いていく栞子さんであったが、今回は謎と直接関わっていく。そのためかやりとりの中で段々と、もしかしてこういうことか!?と気づけることがあり、まるで自分で推理したような気持ちになれるのがとても面白い。あと話に出てくる本が読みたくなる。

3【古書に込められた想い、そしてそれにまつわる謎・事件を解き明かしていくミステリー。--三巻まで含めてこれまでに十の話になるが毎回新鮮かつ引き込まれる展開でスラスラと読めてしまうのが魅力。第二話のタイトルも分からず内容も断片的にしか覚えてない本を探して欲しいという話は、このシリーズを読み始める前に僕がビブリアってこんな話なのかなって抱いていたイメージだった。だが、本が見つかってよかったね、で終わらないイメージを超えてくる展開、結末でとても良い話だった!たんぽぽ娘の話も好き、復刻されてるようなのでそのうち読む。

4【4巻は江戸川乱歩の作品に関する謎を解き明かしていく。江戸川乱歩は読んだ事ないのだけど、この本を読むだけで特に当時の人気ぶりが伺える。面白いと思ったのは江戸川乱歩の作品に関する、セルロイドの黄金仮面や少年探偵団の手帳と言ったグッズなんかが出てきたりもするところで、本だけじゃなくて作家についても興味を持てた。謎解きの部分だけでなく栞子さんを取り巻く環境も大きく変化し、母親や大輔君との今後が気になる展開。

5【5巻で主に取り上げられるのは「彷書月刊」「ブラックジャック」「われに五月を」の三作品。特に気に入ったのはブラックジャックに関する話。同じ作品が好きな人同士が結婚して、家の本棚に同じ本が2冊ずつあるってシチュエーションとても良いですね!話自体もとてもいい話でした、謎が解き明かされた後にBJのエピソードにまつわる解釈を交えた結末が素敵です。そういえばこれまでにビブリアに出てきた本でまともに読んだことあるのBJだけだなと気付いてしまった...これから読みます。

33.コンビニ人間

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 
芥川賞受賞作品ということでブックオフにいつ行っても売り切れており気になっていた本。
「わたし」はコンビニ店員の役を演じる時だけこの世界という舞台に立つことを許されている。普通に生きるとはどういうことか?普通とは誰も説明できないのに、そう生きることが当然とされる世の中で主人公の女性はただ淡々とその異常性に疑問を抱く --ひたすら自分を客観視しているようで感覚だけは自分のものとして語られる不思議な文体に吸い込まれる感覚を覚えた。自分にはない感性をこの本から感じ取ることができる。そのせいか、この本を読み終えた時もどこか感情は平坦であった。まるで自分もコンビニ人間の1人になってしまったよう

34,35.ノルウェイの森(上・下)

ノルウェイの森 (上) (講談社文庫)

ノルウェイの森 (上) (講談社文庫)

 
初めて読んだ村上春樹さんの作品。文章が面白いとはこういうことか!となりました。
上【今更ながら村上春樹作品を初めて読んだ!なるほどこれは確かに惹かれる文章だ!言い回しとか表現が面白い、特に緑のセリフが好き。雨打たれた猿のように疲れているのとかあなたのしゃべり方好きよ。きれいに壁土を塗ってるみたいで。とか!キャラクターとしても緑は好き、生き生きしてて。あとは突撃隊も好き。この作品読んでからというもの、朝ラジオ体操をして跳躍に差し掛かるたびにいつも突撃隊のことを思い出す。

下【一番好きなシーンはワタナベ君が緑の父親とキウリを一緒に食べる場面です。「シンプルで、新鮮で、生命の香りがします。いいキウリですね。キウイなんかよりずっとまともな食いものです」この本を読み終わってからすぐにキウリを買って海苔を巻いて醤油をつけて食べました。この本全体の雰囲気としても感じたんだけど、いろんなシーンがそれぞれ、ふと思い出す大事な思い出って感じがして懐かしい気分になります。なんというか生きてるって感じ。

36.沈黙

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 
こちらも丸太町ルヴォワールを勧めてくれた方が教えてくれた本です。非常に心に刺さるものがあった作品。映画も面白かったです。キチジロー!
キリシタン禁制であった時代の日本に、師の背教を聞いた二人のポルトガル司祭が渡る。日本で彼らは隠れ潜みながらも信ずるキリストの教えを伝えていく。しかし、この国は沼地だ、彼らの神は否定されて、広めたものも異形の神へと形を変えていた。使徒や彼らに加えられる仕打ちに神はなぜ沈黙しているのか。 --すごいという言葉で片付けるべきではないが、壮大な映画を見たかのように心に響くものがある。キリシタンの迫害、教科書では習ったはずだが全く理解してはいなかったと思い知らされた一冊。現代日本人の宗教観の背景を覗いたようであった

37.壁

壁 (新潮文庫)

壁 (新潮文庫)

 
去年は安部公房にもハマりました。話の内容は6割も理解できてないはずなのに、不思議ととても癖になります。壁は特に意味のわからなかった作品。
彼が名前を失ったのは、名刺が彼になったからです。彼の愛した人はマネキンになりました。彼の胸の中は空っぽで、曠野を吸い込みラクダも取り込みかけます。彼は裁判にかけられてそれを逃れるために世界の果てを目指し、そこで壁になりました。 --本当にこの本はこの世界の人が書いたものなのでしょうか?まるで今までの常識というのは自分だけがそう思っていただけで、実は法則なんてものは簡単に変わってしまうのかもしれません。一つの物事に人それぞれの感じ方があるのならば一つの感じ方に複数の物事があっても不思議ではないなと思った。
淡々と不可解なことが起きていく中、登場人物はそれをあり得ないことと分かっていながら冷静に受け止めていく姿を見ていると、不思議と「確かに一理あるな」と思えてくる。例えば、突然そんな気がするわけじゃないけど、そうでない証拠もないからと他人の家に押しかけて「ここは私の家じゃないでしょうか?違うなら証明してください」と問答する男の思考は、読んだときはなるほどと不思議と感じてしまう。後から考えるとおかしいし笑えてくる。
とにかく全編通じて人間は変形する、それはもう変形する。ある時は壁になって透明人間になって狸になって繭になって液体になって絵になって肉にもなる。そんなことあってたまるか。

38.砂の女

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

 
同じく安部公房です。砂の女は物語自体は読みやすく場面とかも想像しやすかったです。でもその中に込められているものを汲み取るのはやっぱり難しいですね
--砂、1/8 mmの非日常は体も心にもじわじわと入り込んで行きやがて覆ってしまうのだろう。昆虫採取に出かけた男は砂丘の穴の中の家に住む女の家に閉じ込められてしまう。幾度も脱出を試みるが、女や砂丘に住む人々に阻まれてしまう。砂に取り囲まれた生活を強いられる主人公の心理描写は、読んでいる人にも伝わり、まるで自分も砂に覆われてしまったかのような不快感を感じずにはいられなかった。砂は何かの比喩表現でもあるのだろう、作者、そして自分にとっての砂とはなんだろう。そして砂から逃れた先にあるものはなんだろう。

39.箱男

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

 
安部公房読んだ本3作品目。なんなんだこの本は!?って思いながら読み進めてました。
腰程までの高さのあるダンボール箱を頭から被り、艶消しビーニールを張ったのぞき窓から外界を眺める箱男。本作を読んでいると、箱の中の男というよりも、どこか箱自体が意思を持って生きているような感じを覚えた。つまり、箱を被った瞬間誰であっても皆が箱男という人物になってしまうのだ。作品の中では偽箱男が現れたり、箱男の中の人物が移ったりもしていくのだが、本作の構成や軍医を取り巻く事件が相まって、訳がわからないと言った感じになる。丁寧にも箱男の材料、作り方が書いてあるので一度箱男になってみるのもいいかもしれない。

SF作品
40-42.新世界より(上・中・下)

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

 
貴志祐介さんのSF作品。個人的には天使の囀りと同じぐらい好きです。
上【1000年後の日本、人々は念動力を手にし、しめ縄で囲われた田舎のような町で暮らしていた。2011年にPKを手にしてから物語の舞台に至るまでの隠された歴史とは?そして人のように巨大で知能を持ったバケネズミ、白い巨大なウミウシのようなミノシロ、今とはかけ離れた生態系それらは一体何者なのか?未来を舞台に歴史を明らかにしていく少年少女たちの物語 --上巻を読了。前半は正直退屈だったけどミノシロモドキ(国立国会図書館つくば館)に出会ってから面白さが一気に加速した!バケネズミ可愛いか思ったら結構恐ろしい

中【--現代の世界に念動力というたった一つの要素を加えただけで、どれだけ大きく世界は変化するのか。そんなテーマを感じさせる小説で、中巻では、忌み隠されていた悪鬼と業魔の正体がついに明らかになる。上巻で感じていた不穏な空気は一気に加速し、この小説の世界に隠された闇に焦点が当てられていく。この作品に出てくる呪力を科学技術に置き換えて考えてみると、人類には手に余るような大きな力を手にした時、それを制御して社会を豊かにするものにできるのか、それとも人類を破滅に追いやるのだろうか、ありがちなだがそんな考えが浮かんだ

下【--神の力、呪力そう呼ばれる念動力を持った人間達の世界を描いた主人公 早希達の物語は、バケネズミと言う知性を持った生物との戦いで終盤を迎える。そして町を去ったかつての親友の子供と出会うことになるがそれは最悪の形で訪れる。人間とは何か?それを問う本作は、千年後の未来からその先の千年後の未来に向けて書かれた手記である。これは一生答えは出ないけど、答えを考え尽くし想像することが大事なんだと伝えているように思う。想像力こそが、すべてを変える。想像力が良い形でも悪い形でも顕著に現れる本作ならではの重みを感じた。

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43,44.百年法(上・下)

百年法 (上) (角川文庫)

百年法 (上) (角川文庫)

 
山田宗樹さんは、出身大学が同じなので気になっている作者でした。他の作品として嫌われ松子の一生なんかも気になってます。不老不死について考えさせられた一冊。
上【不老化技術が確立され、寿命から解放された社会。肉体はいつまでも若いままでいられる夢のような世界が実現する。その一方で、タイトルにもなっている「百年法」は、不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て死ななければならないという生存を制限する法律が打ち出される。百年法を成立させるために画策する官僚や、対抗するテロリスト、百年法によって生きる権利を奪われる人々など様々な登場人物の視点から物語は進んでいく。考えさせられると同時に我を忘れる面白さ!特に不老不死になりたいという願望について考えを改めさせられる一冊。

下【不老化技術が一般化した世界で、あえて処置を受けずに生きる人物、仁科ケンを中心に物語は結末へと迫っていく。下巻では不老化技術や百年法に関する問題が次々と明るみになっていく。不老化処置を受けてから百年たっても法律で定められた死から逃れながら生きる人々や、身勝手な理由によって百年法から逃れる特例を受ける人々などが続出する。永遠に老いない理想の世界は歪んでいき、変化のない停滞した世界を感じさせる。人であれ組織であれ社会であっても変化していくことが進歩へ繋がっていく事を感じさせられた。

45.マレ・サカチのたったひとつの贈物

 
きれいな表紙と量子病というキーワードに惹かれて買った本。量子病・祝祭主義などなど魅力的な設定で面白かったです。
自分の意思とは関係なく、タイミングや場所も予測できずにワープしてしまう病気「量子病」彼女は身につけた青い物だけしか所持できず、誰かの前に突然現れる。「出会いは神様の意思。でも、再会は人間の意思」場所も人物もさらに時系列も次々と飛び変わるこの本はパズルみたいな作品で、一つ一つのエピソードが重要な意味合いが込められていることを感じさせる。文章、構成、設定だったりに引き込まれる面白さを感じた。感想を書くためにもう一度読んだけどその正体はつかめない感じの不思議な作品。

46.きまぐれロボット

きまぐれロボット (角川文庫)

きまぐれロボット (角川文庫)

  • 作者:星 新一
  • 発売日: 2006/01/25
  • メディア: 文庫
 
星新一さんのショート・ショート。非常に読みやすくていいですね!
--言わずと知れた星新一ショートショート集。一番好きな話は「花とひみつ」。花付きの少女が空想して落書きした"花の世話をするモグラ"。その絵が飛ばされて離島の研究所へ流れ着き、それを命令書だと信じて機械のモグラが作られ完成する。しかし、それを見に来た大臣にそんなものは命じてないと言われ研究所は解体される。機械のモグラは離島を飛び出て、今でも人知れず世界中で花の世話をしている。...なんかステキ!こんな話をパッとできたらモテそう

47.横浜駅SF

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

  • 作者:柞刈湯葉
  • 発売日: 2016/12/24
  • メディア: 単行本
 
横浜に出張に行った際に買った本。横浜駅で「横浜駅SF」に関するリアル謎解きゲームがあって参加してきました。小学生たちにスイスイ抜かれながら悔しい思いをした覚えがあります。
皆さん大変です、日本は本州の99%が横浜駅になりました。何を言ってるのかわからない?言葉通りです、横浜駅が自己増殖し、エスカレーターが自動生成され、人々はエキナカで生活することを余儀なくされました。脳内にSuikaを持たない住民は自動改札によって横浜駅から追放されるのです。そんな横暴は許されません、人類は横浜駅には屈しません。非Suika住民でも駅構内に5日間滞在できる「18きっぷ」を手に立ち上がれ!42番出口を目指すのです、そこには何かが待っている!キミは一人じゃない、JR北日本とJR福岡が味方だ!

48.虐殺器官

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:伊藤計劃
  • 発売日: 2014/08/08
  • メディア: 文庫
 
伊藤計劃さんのSF作品です。読み終わってから非常に考えさせられた物語です。
近未来SF、徹底した管理社会、そして魅力的な悪役、そういった所からアニメPSYCHO-PASSに近い雰囲気を感じた。ただしこの作品の悪役についてはなんと言語学者である、そんな物語今まで見たことあっただろうか。言語は普段使っているにも関わらず深く考えたことはなかった。言語=思考のような気もしていたが、言葉にはできない気持ちというのもたくさん経験している。ひたすら一人称で語られるので読みやすさはあるが、なんというか考えさせられる問いかけが他にもあちこちに散りばめられた小説だった。

49.ハーモニー

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:伊藤計劃
  • 発売日: 2014/08/08
  • メディア: 文庫
 
同じく伊藤計劃の作品。虐殺器官とは真逆に極端な社会。ディストピアみたいな作品は世界観がいいですよね。
大人になるとWatchMeと呼ばれる身体監視システムが導入される、その世界は医療分子によって病気が放逐され、ライフデザイナーによる適正な食事、生活によって健康が管理される医療福祉社会。与えられた生活を享受する人生に疑問を持った少女達は見せかけのユートピアに反逆する。--SFとしての設定やギミックなどとても面白かった、がどう感想を書こうかと悩ましい。合理的な選択ができるようになりたいと考えている私にとって、それを意識の喪失として描いている本作は、果たしてそれが善いことなのか、と投げかけているように感じた。

50.know

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

 
正解するカドというアニメで野崎まどさんを知りました。表紙の絵もあいまって場面毎に映像を浮かべながら読めました。
脳に移植された電子葉によって知りたいことは即座に調べられる未来の話。知るとは何なのか、なぜ人は知識を追い求めるのかというテーマが描かれる。恩師が残した暗号の先に待っていた少女と出会い、すべてを知るための物語が始まった --知ることはより良く生きるための手段だというのが僕の元々の考えだ。この本では、物質の自己組織化が「生きる」に対し、情報の自己組織化が「知る」と述べており、生きると知るは同義だと言う。なんとなくだが納得させられる言葉だった。重厚なテーマに対して物語展開が所々アニメ感、やったぜ!って感じ。

51,52.君を愛したひとりの僕へ/僕が愛したすべての君へ

 
どちらから読んでもいい2冊の作品。切なくも幸せな物語。
君僕【並行世界を舞台にした読む順番によって物語の結末が変わる2冊の本。幸せな物語が好きな人はこちらから。両親の離婚を経て並行世界を研究する父親についていった世界で主人公はそこで少女に恋をする。しかし主人公とその少女はどの並行世界でも幸せになれない運命だった。さぁ、世界を消し去ってしまおう。こんな、愛する人のいない世界なんて。 --バタフライエフェクトシュタインズゲートのような並行世界を扱った話。安易に並行世界を移動するのではなく、その世界での主人公の一生が書き切られていて、他の作品にはなかった面白さを感じた。

僕君【並行世界を舞台にした読む順番によって物語の結末が変わる2冊の本。切ない物語が好きな人はこちらから。両親の離婚を経て母親についていった世界。この世界で僕はある女性と恋をして結婚する。この世界ではあらゆるものが無意識のうちに並行世界を行き来しており、ごく些細な変化なため移動した人ですら気づかない。並行世界の自分は自分なのか、今目の前にいるのは、僕の恋人なのか? --どちらも並行世界がテーマだが、君愛は科学や技術に焦点を当て、この僕愛では認識や心理に目を向けている点で、この2冊は見事に対となる素晴らしい作品!

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53.旅のラゴス

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

 
筒井康隆さんが書いたSF小説。とても好きな本で、夏に読書会に参加したときに紹介しました。
人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ。これは主人公ラゴスの哲学であり、その生き方に魅せられるそんな小説。話の展開だけでなくそれによって変化するラゴスの心理も見所の一つ。 その中でも一番の見所は、知識を学ぶ際の心理描写だと感じており、これほどまでに楽しんでいる表現ができるのかと感嘆した。それはグルメ漫画のような豊かさであり、学ぶ楽しさを感じたことのある人なら共感できるはずだ。 2番目に好きな場面は馬が飛ぶ所。スカシウマかわいい

54.アルケミスト

 
旅のラゴスが好きなので似た雰囲気という評判を目にし気になった本。こちらも本好きの方からおすすめされたのを機に読みました。
主人公の羊飼いの少年はある日見た夢をきっかけに、宝物を探しにアンダルシアの平原からエジプトのピラミッドへ旅するという物語。本書はハッとするような素敵な台詞が数々と出てきて、自分の人生で何が大切なのかを感じさせてくれる本でもある。特に好きな台詞を二つ「夢を追求している時は、心は決して傷つかない。」「学ぶ方法は一つしかない、それは行動を通してだ」他人や環境に反応しながら生きるのではなく、主体性を持って自主的に生きる事が自分の人生を素晴らしいものにしてくれるという事を感じた。

55.虎よ、虎よ!

 
ハヤカワの海外SFを読もう!と思ったときに表紙のインパクトとあらすじで直感的に面白そうと選んだ本。
ジョウントという瞬間移動能力で自由に人が往来する25世紀、主人公のガリヴァーフォイルは敵の攻撃を受けほぼ全壊した宇宙船の中で170日以上漂流していた。ある日、遂にヴォーガーという船が通りがかり救助を求めるが、主人公は見捨てられてしまう。そこから主人公の復讐劇が始まる。 --主人公フォイルの復讐に燃える破天荒ぶりにひたすら圧巻された話だった。最初は船そのものに怒りを燃やすというメチャクチャさ。正体を隠すためにサーカスの団長に扮するのだが、次は何をしてくれるんだという期待を抱く意味ではまさにその通り。

一冊の本にここまでアイデアを詰め込むかと言ったほどのページをめくるたびにやってくるワクワク感に心踊らされた。そして、終盤にかけての登場人物達の思惑が集まり謎が次々と明らかになっていき、どうなるんだと考えながらもそれが追いつかないほどの疾走感!最後の方は読み進める手が止まらなった。 やる夫スレでAAストーリー化されており、そちらも素晴らしい完成度だったのでこの本を読んだ人にはオススメ。

56.たったひとつの冴えたやりかた

 
タイトルは色んな所で耳にしていたのでずっと前から気になっていた作品です。感動するSF作品。
「大好きなシロベーン、なにがあっても忘れないであたしたちが大の親友だったこと、それからいっしょに冒険をして、おたがいの命を助けたことを。」16歳の誕生日に両親から貰った宇宙船を改造して憧れの銀河に旅立つ少女。宇宙で行方を消した飛行士のメッセージと共に未知のエイリアンと出会う。一人の少女とエイリアンの奇妙な旅、そして冒険の先にたどり着く「たった一つの冴えたやり方」 --1987年に発行(翻訳?)されたという本書。これぞ読みたかったSF作品。3つの短編が綴られているが、特に表題の作品は色褪せない感動の名作

57.紙の動物園

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

 
表紙の折り紙の虎さんが可愛いですね。あらすじなんか読んでも可愛らしい感じをイメージしてたのですが、良い意味で裏切られました。かなり心に来るヘヴィーな内容です。
「紙の動物園を含む7篇からなる短編集。SFやファンタジー要素がありながらも、変わらない人の心の根底を描いたような作品集。--中でも面白かったのは次の4つの話。⑴英語の話せない母親とアメリカに住む少年、親が子を想う気持ちを描いた「紙の動物園」⑵文字ではなく縄に作った結び目で歴史を紡ぐ民族に着目した創薬研究者の話「結縄」⑶身体に住むバクテリアが人間の思考や感情に影響を与えているという仮説に焦点を当て、宇宙船を漂流した先で原住民に出会った少女の話「心智五行」⑷思い浮かんだ漢字から占いをする老人「文字占い」

58.ユービック

 
電気羊はアンドロイドの夢を見るか?が有名なフィリップKディックさんの作品。彼の作品は表紙がかっこいいですね。バーナード嬢曰く。という漫画で目にし気になったので読んだ初ディック作品。
主人公が所属するのは、読心や未来予知といった超能力を持つ人たちの力を打ち消す能力を持った反能力者の集団。彼らの身の回りで時間の退行現象が発生し、次々と世界が巻き戻っていく。鍵になるのは「使用上の注意を守れば安全です」という謎めいたキャッチフレーズと万能すぎる特効薬「ユービック」何が起きている何が起こっているんだと最後まで予想できない超展開の連続です。初めて読んだPKディック作品であったがを「ディック感覚」と呼ばれる「現実が崩壊していく強烈な感覚」を存分に味わいました。

59.わたしを離さないで

 
2017年ノーベル文学賞カズオ・イシグロさんの作品ということで読んだ作品。なるほどこれが・・・と圧倒されました。
2017年ノーベル文学賞カズオイシグロさん「壮大な感情の力を持った小説を通し、世界と結びついているという、我々の幻想的感覚に隠された深淵を暴いた」それを感じさせる作品。ある理由で長くは生きられない若者たちの物語。外界と隔てられたヘールシャムと呼ばれる施設で育てられる提供達。そこで過ごした日々を綴るキャシーは紛れもなく一人の人間であった。本作は、あったかもしれないifの世界を描いているようなSFでもありながら、それによって浮き彫りになる人間の本質、感情、生き方を強く訴えかけてくるような話でもある。

印象的だった場面が二つある。1つはルースのポシブルを探しにいく場面。この場面は違った環境、選択をしていたらもしかしたらそうだったかもしれない自分に焦がれ、すがる人の気持ちそしてどことない虚しさを感じさせた。たとえば別の世界を覗けてそこで生きている自分が別の生き方をしていることを知れたとしても自分が救われるわけではないのに、それを知りたいと思ってしまう気持ちにとても身につまされる思いを感じた。

もう一つは「ベイビー、ベイビー、わたしを離さないで...」と一人で歌い踊るキャシーを見たマダムの解釈。新しくとてもよい世界がやってくる。でもそれは無慈悲で残酷な世界でもある。少女は消えつつあるとわかっている古い世界を胸に抱きしめて、わたしを離さないでと懇願しているように映ったと言う。正直ここの場面をどう解釈すればよいのかを飲み込めてはいないが、この小説を読んで感じた美しさみたいなものが凝縮されているような場面に感じられてとても好きだ。

エッセイ系
60.底辺女子高生

底辺女子高生 (幻冬舎文庫)

底辺女子高生 (幻冬舎文庫)

 
これも本好きの方からお借りしました、秋田の高校に通う女子高生のエッセイ。底辺と言いつつけっこうハチャメチャな高校生活。
秋田県横手市の高校に通っていた著者の「底辺」と自称する高校生活が綴られたエッセイ。思い返してみれば何があんなにも嫌だったのかは自分でもわからない、だけどその頃は本当に嫌だった、そんな気持ちが伝わってくるような話。 ただ見方によってはとても楽しそうでもある!週に一度午後まるまる使ったスキーの授業などの秋田ならではの話や下宿に住んだり大阪や和歌山そして徐々に東北へと戻る13日間の壮大な「家出」の話などは本当に高校生か!?と思うほど。上位じゃなければ底辺のがいい、普通を嫌う性格が垣間見えるようだった。

61.ご冗談でしょう、ファインマンさん

 
これも同じ方からお借りしました。かなりピンポイントで興味を惹かれる本を紹介していただけて嬉しく感じています。ファインマンの変わり者エピソードがとても面白い一冊。大学では物理に心を折られた私でも読めました。
Surely You're Joking, Mr. Feynman!読んだら飛び出してしてしまう言葉。前半は絵に描いたような科学大好き少年!しかし読み進めていくうちに、科学、いや現実の事象にここまで真摯に向き合うことはただ事ではないと気付く。理系なら名前だけはファインマン。正直彼の業績は理解に遠いが、この本は歴史になお残す科学者にふさわしい軌跡を描いている。物理学者は物理のみに魅入られた人のように思っていたが化学者、生物学者としてもふさわしい経歴が描かれ、科学を楽しむとはどういうことかを教えてくれる

62.バッタを倒しにアフリカへ

 
秋田出身のバッタ博士の綴るアフリカでのバッタ退治奮闘記。研究者って何してるのって気になる人にもわかりやすく教えてくれます。また特に研究者は勇気のもらえる話だと思っています。
バッタ博士は実際にバッタの被害に苦しむモーリタニアへ渡り、たった一人の日本人研究者として立ち向かう!しかしその道は険しくモーリタニアとの文化の違いやそもそもバッタがいない、そして研究費どころか彼の生活費すらも危うくなりながらも時間だけは過ぎ数々の困難に直面する幼い頃に抱いた夢と現実との隔壁が露わになりながらも、夢へと向かっていく一人の研究者の姿を描いた一冊。 --モーリタニア!バッタ!研究者!それらに一人の人間が関わっていくリアルがこの本は描かれている。表紙のイロモノ感とは裏腹にとても熱くなり真面目な話

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63.ゼロからトースターを作ってみた結果

 
トーマスウェイツという当時美大生の学生がゼロからトースターを作るために奮闘した記録。笑えるだけでなく勉強にもなります。
現代のテクノロジーに頼らずに、原料からトースターを作れるか⁉︎鉄鉱石から鉄や、じゃがいもからプラスチックを作ろうとしては失敗し、苦戦しながらも何故かいつも楽観的な著者。ゼロからトースターを作りたい人は必読の面白ドキュメンタリー! --底抜けの陽気さと謎の行動力を持った人物が意味のわからないことに全力を注ぐ姿は控えめに言ってサイコーだね:)(日本20代男性)って感じ。ウソだろ、違うよなみたいな場面が多々出てくるがこの本では悪い予感は大体当たる。とても笑えて面白かった。ただしこの本読んでもトースターは作れない

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64.出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

 
出会い系というといかがわしいイメージがあるが、この本で出てくるのは男女の出会いに限らず自分の趣味や特技なんかを喫茶店とかで30分間相手してもらうといったサイト。出てくる人たちのキャラが濃い、著者に本をおすすめされたいとも思いました。
皆さんは人に本を勧めたことを1度は経験したことがあるだろう、自分も何度かある。本作では出会い系を通じて、30分という短い時間で初めて会う相手を見極め、オススメの本を紹介するという武者修行のような経験が綴られている。著者はヴィレヴァンの元店主で豊富な知識を持って本を紹介していくのだが、始めはなかなか上手くいかない。そんな苦節の末編み出したのがあなたが素敵+この本が素敵=素敵なあなただからこの本がオススメです作戦!情報で溢れる現代で求められ、求めているのはあなたは素敵です、そんな自尊心なのかもしれない。

65.深夜特急1

 
言わずと知られた旅のバイブル。今年は海外旅行に行きたいと思ってます。
デリーからロンドンまで乗合バスで行くことができるのか?1970年代にそれを志した当時26歳の著者による紀行小説。その旅は何故か香港から始まる!--旅をする人の必読書、そう銘打たれた本書は、海外でさえも気軽に旅行できるようになった今でさえ、旅とは面白いものなのだとそう感じさせてくれる熱気を今でも色褪せない。そもそも旅とは何なのか?言われてみれば多くの人が関わる行為でありながらそれを焦点にした学問はないような気がする。本書はそんな疑問を置き去りにして旅の楽しさを疑似体験させてくれる、そんな話。2巻をすぐ買った

 

以上です。ずいぶんと長くなってしまいましたが、もし読んでくれた方が興味持ってくれる本が1冊でもあれば幸いです。
また、前から興味があったけど…といった本があればこの機会に読んでみてはいかがでしょうか。
今年は年間100冊読破を目指して励みます!
もし読者の方もおすすめの本があれば教えていただけると幸いです。
では今年も良い一年を!

ビブリオバトル2019 in AKITAに行ってきた

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図1 ビブリオバトル2019 in AKITA
ビブリオバトルとは?

本日は、秋田拠点センターアルヴェで開催されていた「ビブリオバトル 2019 in AKITA」に参加してきました。
ビブリオバトルは最近良く耳にしており、気になっていたのですが、実際に参加してみて面白かったので紹介します。

ビブリオバトルとは、別名「知的書評合戦」とも呼ぶそうで、面白かった本・おすすめしたい本を5分間でひとりずつ紹介し、最も読みたくなった本を聴講者が一冊選び投票で順位をつけるという競技です。
私はもちろん聴講者側として参加してきました。
今回のビブリオバトルは聴講は自由で、発表者のご家族の方々と友人らしき人が目立ちました。

具体的には次の流れで進行します。
1. 発表者は5分間の時間を使って本を紹介します。この際パワーポイントやレジュメは使用せず、紹介する本だけをもって話します。
2. 発表直後2分間の質疑応答へ移ります。会場から出た質問に発表者が回答します。
3. 全員の発表後終わった後に投票で最も良かった一人(読みたくなった1冊)を決め投票します。
4. 最も票の集まった発表者がチャンプになります。

本日開催されたビブリオバトルでは中学生の部と高校生の部に分かれており、それぞれ発表者は7,6人、1~3位までを決定しました。

紹介する本は小説やエッセイ、実用書など有名なものから初めて知る作品など様々で、発表の形式も聴講者に質問を投げかけたり、パフォーマンスらしきことをしてみたりとその形式はかなり自由なようです。

もともとは大学研究室で、輪読会で読む本を決めるために本を紹介し合うというといったものから発祥したらしいですね。
読書会などでも同じようなことがやられているかと思いますが、本を紹介し合いたい少人数で行われる読書会と比べると、聴講者の人数や集まる人々のバリエーションという点で性質は異なるように感じます。

 

ビブリオバトルって面白いの?

ビブリオバトルには初参加かつ紹介された本はどれも読んだことのないものでしたが、とても面白かったです。
それに実は聞くまでは中学生・高校生と正直甘く見ていました。

ビブリオバトルは、単純に好きな本をおすすめするだけでなく、順位を決めるという性質上いかに人を惹きつけるプレゼンをするかというのも重要になると感じました。
5分間しかも喋りだけで聴講者の意識を惹きつけるというのはすごく難しいことだと思います。
プレゼンで人を惹きつけたいと思っている人には勉強の場にもなると思います。

今回感じたのは、プレゼンする対象がどんな人達なのかを意識し、それが見事にハマった発表は魅力的に見えました。
自分が読んで思った感想についても、ただ発信するのではなく共感を促すところまで繋げることで聞いてる人には意味を持ってくるんだなあなどと感じました。
そして、一番面白かったのは独自の解釈を述べていた発表です。

具体的には、小野寺史宣さんの「ひと」を紹介していた発表者がいて、その発表の中で表紙について自分なりの解釈を発表していました。

「ひと」がひらがなで書かれているのは主人公の孤独「ひとり」という言葉にもかかっている一方で、表紙では主人公の男性が「ひと」という字に向き合っており、孤独になった主人公が人の暖かさに触れ合っていくというこの作品を表現している、といった感じのことを述べていました。
(なるほど~と思ってメモ取り忘れていたら、帰る途中に忘れました…たしかこんなニュアンスのことだったかと…)

ひと 小野寺史宜の青春物語

ひと 小野寺史宜の青春物語

 

そんな感じで、5分という短い時間でプレゼンを学びつつ面白い本も知ることができるというとってもお得なイベントです!
ちなみに今回の会場では紹介された本が売られていました。
面白いと思った本をすぐその場で買うことができるのはなかなか良く出来ていますね。
結構買ってる人がいました、私も紹介されていた「青少年のための小説入門」という本を購入しました。

弱気な少年と不良という二人の青年が小説家を目指すという話だそうです。
本の中では、その二人が小説を書くために名作文学を読んで、一部を引用しながらツッコミを入れたりなどのシーンが多々あるようです。そんな名作文学の面白いところもつまみ食いできるみたいな話という部分に惹かれました。

 


読みかけの本がたまっているのでそのうち読みます。

読書は「アウトプット」が99%

自分が得た情報をどうやって活かすか

この本では読書というインプットは、「話す」「書く」「行動する」というインプットを行うことで、もっと血となり肉となるということを伝える本です。

これは読書に限らず、例えば研究に携わっている自分にとっては論文や学会、報告会などの新たな情報に触れる場において情報得て、それらを活かすにはどうすればよいのかと言ったことを学びました。

私はもともと面白そうな本があれば読むぐらいの感じで読書をしていましたが、この本を読んでから漠然とですが、頭の中に枠組みができて読んだ本をそこに収めていくみたいなイメージで本と向き合えるようになりました。
読書の習慣ができたのもこの本がきっかけです。

この本の中で特に気に入ったフレーズは「用の美」という言葉です。
これは工芸の世界で使われているそうですが、有名人の作った作品よりも日常の世界で使う道具こそほんとうの美しさがあるといった意味合いで使われるそうです。
物事は循環させることが大事で、手元において満足して終わるのではなく、得た情報や知識も流さないと頭のなかで淀んでしまうということを見事に言いえた表現だと思います。

この本で伝えたいことは至ってシンプルです。すなわち、アウトプットが大事なんだ!ということに限ります。
読むだけの読書から自分の思考や行動をより磨くような読む方を実践すると、アイデアが溢れ出るようになり、人格が作られ、伝え方も磨かれていくという良いこと尽くしなんだということがわかり、実践する前からそんな気にさせてくれます。

これは何もビジネス書に限りません。
この本ではどういった本を読んだら良いの?そんな疑問にも答えてくれます。
読んでおきたい古典や役立つ本の紹介などもありますが、特に私が気になったのは2つ。
「今までにない発想を得るには、今まで無関係だった分野にも足を踏み入れてみるのが大事」ということと「文芸書からは感動を学ぶ」ということです。

1つ目は、いずれも仕事と関係ない分野の本であるはずが、仕事をする上で他者と差を生む鍵になるというのです。
例えば自分の専門ではない分野の本。
この本で紹介されていたのは経営者が生物や化学の本を読むと言っていた話でした。
著者は、成功者がすごい発想をできるのは生まれ持った才能ではなく、同じものを見ていても違う角度から見ることができるからだと分析しており、そういった能力を培う事ができるのだと述べています。

2つ目は、文芸書から感動を学ぶということです。
自分が感動できる人間でなければいい仕事を成し遂げることはできないと述べており、人間としての軸を作ることで、感動を知るからこそ「感動」をアウトプットできる人になれるといいます。
文芸書によって、表現力や想像力を培うことで人を動かす資質を鍛えることができます。

 

アウトプットはいつでも始められる

アウトプットの重要性は言われる前から、まぁそうだろうな…だけど何をしたら良いのか…そもそも面倒臭そうだし…と私は感じていました。
このブログもそうですが、独りよがりでもとにかくやってみると知識が整理されて、何がわかってて何を読み取れていないのかがわかったりするのでとにかくやってみるのは良いことだと思います。

アウトプットの作業としては「話す」「書く」「行動する」の3つです。
特に書くは一人でも始められるので個人的にはおすすめです。
ブログを始める前はA4の紙に書いたりなんかをしてました。

この本では特に推奨されていたのは「行動する」です。
実行は最強のアウトプットで本の内容を10%でも実行できたら上出来だそうです。
たった10%で良いならなんだかできそうな気がしてきます。

これらの行動を起こすことで目指すものは本または情報を「役立つもの」「付加価値のあるもの」に変えることです。
そのためのキーワードは「要約力」と「俯瞰力」。
本に書いてあることをそのまま伝えるのはパクリにしかならない一方で、それを行動に起こしてどう理解したかを付加することで、自分の意見・付加価値に変わるというのです。

アウトプットする上で意識したら良いのは
「何が書いてあったか」「そこから何を学んだか」「それをどう活かすか」の3点です。
本を読む前にこの3つのフレームを意識して向き合っていくと、そのままアウトプットへ行かせることができるように感じています。

本の世界に没頭する読書モード

仕事や私生活に悩み事なんかがあると常に頭の中をぐるぐると…だったり、忙しすぎて寝る前にも明日はアレをやって次はこれやって…みたいな経験を今までもしたことがあるのですが、いかがでしょうか

そんなときこそスイッチを切り替える読書が最適なツールになります。
もちろん他の趣味でも同じことは言えますが、手軽さという面で読書はかなり有用です。

問題を大きくしているのは、常に自分自身です。
と本でも述べているように、
悩んだり考え続けても結論の出ないものについては一度意識を切り離し読書に没頭するのも良いのかと思います。

そうして読書で得た情報をもとにアウトプットを通じて実生活に活かし今後をより豊かなものにしていく。
そういった心の余裕を作り出す意味でも、実りのある読書を続けていきたいと感じています。

君を愛したひとりの僕へ/僕が愛したすべての君へ

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図1 君を愛したひとりの僕へ/僕が愛したすべての君へ
並行世界 (パラレルワールド) を舞台にした恋愛作品

この作品は読む順番が読者に委ねられた並行世界が題材の作品で、同じ主人公が別の選択をしたという世界を描写した2冊で一つの本です。

この本の面白いところはまず、並行世界を題材にした作品特有の物語展開だと思います。これはどちらかというと「君を愛したひとりの僕へ」(以下君愛)に色濃く出ています。
別の可能性を選択した世界が実在していて、その可能性を選択しなおせる余地がある。過去の選択を選び直して、より望む世界を生きたいという願望を映し出しているような身につまれるような面白さを感じます。

例えば、映画「バタフライエフェクト」や「Steins;Gate」などが好きな人には強くおすすめできる作品です。
この作品でできるのは時間移動ではなく並行世界の移動のみという点において、例に上げた2作と設定が違っているので、並行世界移動ができるのであれば…といった想像をしてみるのも楽しいかもしれません。

この物語の世界の設定を書くと、数多くの並行世界が存在し人間は日常的に無自覚にその並行世界を移動しているということが一般的に認知されているようになった世界です。
並行世界の移動については、意識のみが並行世界の自分と入れ替わる形で行われていて、このとき時間は移動しません。
近くの並行世界ほど元の並行世界との際は小さく、また無自覚に移動してしまう頻度も高いため、「あそこにしまったはずのものがない」といった現象は無自覚の並行世界の移動が起きたためだと解釈されています。

並行世界を舞台にした作品にはつきものなのが主人公の恋する女性です。
この作品ではそれぞれの本で主人公が別々の女性に恋をしているという点で今までにない展開だと驚きました。

君愛の世界では、主人公が恋した女性とはどの並行世界でも幸せになれず、無意味と感じる人生を主人公は送ります。
その一方僕愛の世界では、主人公の愛する人と一緒になり幸せな人生を送る物語です。

それぞれ単独の物語として読んでも面白さはあるのですが、この作品は2冊読むことで互いの物語を補完し合いながら完成された物語になります。 

 

異なる並行世界が同時に進む物語形式

この作品の最大とも言える特徴は、お互いがもう一冊の話の続きと捉えることのできる話の構成でしょう。
話の順番を明確に位置づけずに、同時刊行という形で出版できる本だからこそできる発信手法だと思います。

幸せな物語が好きな人は、君愛→僕愛の順
切ない物語が好きな人は、僕愛→君愛の順が推奨されています。

私は、君愛→僕愛の順で読みましたが、たしかに読了後は救われるような気持ちになる幸せな物語に感じました。
逆の順番で読むとこういう話になるのかなと想像することはできますが、実際に経験できるのは片方です。
もしかしたら選ばなかった順番で読んだ自分が並行世界にいて、その自分はどう感じたのだろうと考えさせられます。
なんというか並行世界が実在する感覚のようなものを感じました。


さらに、2冊の本で同じ題材について語られるこの手法は、今後も色んな本に広がってもいいのではないかと言えるほどよくできた作品でした。

お互いの物語にそれぞれ伏線が張られていて、両方読むことで謎が解けるという部分がまず1つです。

また、本をわけることで同じ並行世界という題材を扱いながらも別々のテーマを一貫して扱えて、話にまとまりが出るというメリットも感じました。
君僕では科学や技術面に焦点を当てたSFらしい作品に仕上がってるのに対し、
僕愛では並行世界の存在が実証された世界に生きる人間の内面に焦点を当てた作品になっています。
同じ題材に対して別の切り口でアプローチすることでこんなにも話は広がるのかと見事に感じました。
(ネックは2冊分の値段がかかることでしょうか)

別の人生を歩んだ自分は自分なのか?

2つで一つの作品なのでどちらが好きかという評価は正しくないのでしょうが、私は僕愛の世界が好きです。

僕愛の世界で主人公は、「並行世界の自分は自分なのか」という疑問に直面する。
すなわち、別の可能性を選んでいた自分と今の自分は同一人物かという疑問です。

これはこの小説の中だからというだけでなく、あのとき違う選択をしていた自分がいたとしたらその自分は自分なのだろうかと考えることができるでしょう。

別の可能性について主人公は「いいも悪いもない。僕たちはもうそこに立っているんだから。あらゆる可能性の上に立って、そこで生きていくしかないんだ」と発言しています。
人生は選択の積み重ねだからこそ、自分の選択にもう一度目を向けて見るきっかけにもなるかと思います。

新世界より 貴志祐介

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図1新世界より概要
無意識の思考

本を習慣として本格的に読み始めるようになってからまだ日が浅いのですが、
一番好きな作家は?と聞かれたら「貴志祐介」だと答えています。

彼の作品は、自分では制御し切ることのできない無意識の思考を際立たせるような話の設定がとても見事だと感じています。
例えば、「悪の教典」では倫理観、
「天使の囀り」では快楽と恐怖、
「青の炎」では怒り、
そして、今回紹介する「新世界より」では想像力について考えさせられました。

この小説は、考えたことを現実にする念動力を持った人間が暮らす1000年後の未来を舞台にした作品です。
超能力や魔法といった超常的な能力を取り扱う作品の多くは、そういった能力が存在するどこか別の世界パラレルワールドのように扱われているように感じます。
その一方でこの作品の見事なところは、この世界に念動力が存在したらどうなるかという、あくまでこの現実の延長線にこの小説の世界があると思わせるリアリティだと感じています。

例えば今みんなが念動力を突然使えるようになったらどうでしょうか?
イメージするだけで物を動かしたり、空を飛んだり、などなど
暮らしは便利でより楽しいものになるかもしれません。
では良い面だけか?悪い面はないのか?そういったことにも目を向け緻密に設定が練られているのが本作です。

 

徐々に解き明かされていく謎

この小説は、主人公の渡辺早希の手記という形で始まります。
そのため主人公にとっては当たり前のものであったり、意図的に伏せられたりと様々な謎を秘めたまま物語が展開していくので、はじめのうちは読みづらさや混乱を感じるかもしれません。

冒頭で語られる業魔や悪鬼といった言い伝えの真意は何なのか?
バケネズミやミノシロなど生態系が今とかけ離れているのはなぜか?
どうして人々は注連縄で囲われた集落で暮らしているのか?
1000年後の未来なのに科学技術が姿を消しているのはなぜか?
といったように明らかにおかしいと感じさせている部分があり、それらが後々の展開に大きく関わってきます。

物語の世界の謎が徐々に解き明かされながら進むこの小説は、ある意味推理小説のようにも楽しむことができます。
似たような話の展開として、アニメの「ケムリクサ」やカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」が近いように感じています。
いずれにしても、はじめのうちは物語を雰囲気を楽しみ、謎が解き明かされてからは違った見え方がしてくるといった面白さがあるので上記の作品などが好きな人にはとてもおすすめです。

また、超能力を持った子どもたちとその学校という舞台もあり「和製ハリーポッター」 などと評されることもあるようです。
ファンタジーでもあり、伝奇のようでもあり冒険モノでもありと、
いろいろな要素が含まれていながらもゴチャマゼ感があるわけではなくうまく一つの作品にまとまっている作品です。

想像力と向き合う

ネタバレをしてしまうと面白さが減ってしまうと思ったので多くを伏せましたが、
物語の内容を想像しながら興味を持っていただけたら幸いです。

頭でも述べたようにこの小説のテーマは想像力です。
この小説では呪力として描かれていますが、私はこれを科学技術に置き換えて考えていました。

人々の暮らしが飛躍的に便利になる技術が発明されたが、一方でそれは一歩間違えば人類を破滅させるようなものでもある。
そういったものをどうすればうまく扱っていくことができるのだろうか。
ありがちかもしれませんがそういう考えを浮かべながら読み進めていました。

小説の中では呪力とうまく付き合うために例えば教育、心理学や動物行動学などといった策がとられています。
しかしながらそれらだけでは足りないということも物語の顛末から伺えます。

何事も物事の一つの面だけを信じて突き進めるよりも
想像力を働かせ、特にリスクについては考慮して行動することが大切だと感じます。

花もて語れ

  

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図1 概要
 
朗読を通じた成長と友情の人間ドラマ

 今回紹介するのは「花もて語れ」という朗読をテーマにした全13巻の漫画です。
この漫画では引っ込み思案だった主人公の佐倉ハナが、朗読教室で朗読を学び成長していく話です。
また、佐佐木真理子というハナの朗読を通じて救った女性との友情の物語でもあります。

時として本は、悩みに直面したときに強く心を揺さぶり立ち向かっていく強さを与えてくれます。
本を深く読み解き人に伝えるという「朗読」がテーマだからこその面白みが詰まった物語です。

この作品を通じて感じることは、朗読は面白い!これにつきます。

朗読はイメージに始まり、イメージに終わる。
読み手はイメージしなければ言葉にはできないので、
イメージするために何度も読み込みます。
すると朗読は時として黙読以上に本の内容を聞き手に伝えるものとなる。
という言葉が漫画の中に書かれています。

音声を伝えることのできない漫画でありながら、
それが存分に伝わる内容であることが読むとわかります。

 

マンガでわかる文学作品

この漫画では、宮沢賢治芥川龍之介太宰治坂口安吾夢野久作、etcといった数々の文豪の作品をわかりやすく読むことができます。
それは、朗読の読み解き、考察、表現技法に加えて漫画としての強みを活かしながら描かれているので、自分で読むよりも深く文学を学ぶことができるものだと思っています。

有名な作品が多いながらも実はほとんどの作品を読んだことがなかったので、
この漫画を読むだけで坂口安吾読んだことあるよ!と言えるし、
考察とかも得意げに語ったりできちゃうのである意味お得な作品です。

中でも、やまなしや黄金風景、瓶詰め地獄は一人で本で読んでいたら
正直なんだこりゃって感じだったと思うので、
文学に興味はあるけど敷居は高いなと感じている人にもおすすめです。

 

読書にも活かせる朗読のテクニック

朗読には6つのステップがあり、そのうちのいくつかをいかに述べると、
1.朗読はイメージに始まりイメージに終わる。
2.セリフの読み方
3.地の文の読み方
・・・と続いていき作品の中で徐々に明らかにされていく。

特にステップ3の地の文の読み方は、小説を読む上でとても参考になるテクニックだと感じている。
すなわち、書かれている文章がどの視点から書かれているのかを見極めるというということである。

具体的には地の文は次の6つに分類できる。
作者の視点
 A.作者が作品世界の外から
 B.作者が作品世界の中に入って
 C.作者が登場人物の心の中に入って
登場人物の視点
 D.登場人物が作品世界の外で
 E.登場人物が作品世界の中で
 F.登場人物が自分自身の心の中で

小説の地の文は上記のように視点を使い分けることで、
まるで映画のカメラワークのように作品をもっとも効果的に描写しているといいます。

これを踏まえて本を読んでみると、伊藤計劃虐殺器官はひたすら地の文も主人公のEの視点で書かれているからこんなに没入感を感じるのかなとか(あっているかどうかはわかりませんが)、そういった楽しみ方もできるようになります。

朗読ってただ本の内容を声に出して読んでいるものだと思っていましたが、
この漫画で朗読についての奥深さを感じ、朗読へ興味が高まった作品です。

ゼロからトースターを作ってみた結果

製作期間9ヶ月、製作費約15万円のトースター

現代のテクノロジーに頼らずに、原料集めからスタートしてゼロからトースターを作れるか!?
鉄鉱石を溶かして鉄を作り出し、じゃがいもからプラスチックを作ろうとしては失敗し、苦戦しながらも何故かいつも楽観的な著者。
ゼロからトースターを作りたい人は必読のおもしろドキュメンタリー!

制作当時、著者はロンドンに住みデザインを学ぶ大学院生
持ち前の前向きさと溢れ出さんばかりの行動力でトースターを作るという意味のわからないことに全力を注ぐ姿には最後まで目を離せません!

 

トースタープロジェクト

この本では以下の3つのルールに則って(けっこう破る)、トースターを作っていく話です。
1.作るトースターは店で売ってるようなものでなければならない。
2.トースターの部品はすべて地球が産出する原料から作らなくてはいけない。
3.産業革命以前の技術を使って自分でトースターを作る。
まずトースターを作るにはトースターが何であるかを定義しなくてはいけないという話が始まります。

トースターの部品を素材で5つに分類し、基本的には原料採取→精製→加工といった流れで話は進んでいくのですが…どれ一つとして一筋縄ではいかない!

 

移動距離にして3060 km

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図1 トースター原料マップ

上図はトースターの原料を集めに著者が巡った場所の一覧です。
原料集めについてもどこへ採りに行くか?から始まり、目的地についても求めるものは簡単には手に入らなかったりとかなり苦戦している様子が描かれています。

例えば1つ目の鉄を手に入れるまでの流れは、
鉱山に行ってみる
→すでに稼働してなく観光スポットになっている(クリスマスデコレーションされていた)
→鉱業所の男性が数年前に採った鉄鉱石を分けてもらう
→庭で自作の溶鉱炉を使って精錬するも大失敗
→電子レンジを使った精錬法にたどり着く(ルール3を早速破る)
→が失敗
→試行錯誤の末ようやく鉄をget!!
といったようにプロセス一つとっても一つとしてすんなりとうまくいくものがないので、そこをどう乗り越えるかといった部分は見習うものがあります。
また失敗についても原因考察がなされていて勉強になります。

ちなみにルールの捻じ曲げはちょこちょこ行っていて、著者が自分を納得させるための言い訳が面白いのも本書の魅力の一つです。

 

自分の力で作ってみる

以上のように内容は非常に面白おかしいものでありながらも勉強になる点も多い本です。
最終的にトースターは出来上がったのかという点については本書をご覧ください。
はたして表紙を飾る怪しげな物体は一体何なのか!!

現代ではいろんな物に囲まれて生活しており、技術が高度すぎてブラックボックス化しているものも多いのですが、それら一つ一つにどういった技術・材料使われていて、どんな歴史があるのか目を向けて見るきっかけにもなる一冊です。